柘榴坂の仇討

『柘榴坂の仇討』

原作は、浅田次郎「柘榴坂の仇討 五郎治殿御始末」。映画館で観たかったが、いくタイミングが無く、テレビ放送を待って、観た。

「最後の忠臣蔵」が好きで、だけどあれはラストで切腹するシーンまで描いてあり、何度見返しても瀬尾孫左衛門が裃を着るシーンで終わらせてしまう…希望が無い終わり方だけど、こちらは希望がある感じがした。

主君が誅殺された事の仇を討つよう命令され、しかも自刃してはならぬと言われ13年…氏素性を隠し13年の間、あの桜田門外の御駕籠のそばに座ってたし、 自訴するお屋敷の並ぶ垣根沿いに座っていてふたりとも時が止まっていたんだなあ。

観終わってすぐに、原作を読んでみた。とても短い話で24ページ。なので原作には無かったシーンがいくつかあり、友との語らいの場面、セツとの対面、直吉の住環境と人間関係など。でもどれも余計な描写にはなっておらず、行間が描かれてる感じがしてとっても良かった。たいてい原作にはない設定が加わってると嫌悪感があるものだけど、そんなことなかった。そして1時間もしないで読めるのだけど、これを2時間の映像にしたのはすばらしい。

配役も豪華で見応えがあった。中井貴一さんが出てるとピシっと引き締まって とっても好きだ。大切な役目を受けてごきげんだったところから奈落の底に落ちたかのような不手際(?)で父母自害は苦しかったけど、側によりそうセツが美しかった。武士道があるならば、広末さん演じた、夫を支え続ける妻にも、道、婦道というものがあるんじゃないかって本当に思った。(実際に、そのような女性を主役にした 、山本周五郎著「小説 日本婦道記」という時代物小説がある)

そして音楽は久石譲氏だった。やはり、美しい旋律だった。セリフや場面のじゃまにならない優しい音楽だった。